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2014年 白杖の日

10月15日の白杖の日を迎えるに当たり、世界の約2億8500万人の視覚障害者を代表するNGO、WBUは、アクセシブルなGPS等、視覚障害者が自分で移動できるようになるための昨今のデザインや技術を歓迎します。
ただ、視覚障害者の移動と自立に寄与するこうしたデザインや技術も、社会の人たちと同じ場を共有する際に生じる視覚障害者のニーズを考慮した企画でなければ、視覚障害者にとって障壁となったり、新たな危険となることも事実です。

今日では、安全に自分自身で移動できるか否かが社会で重要な問題になっています。
誰でも目的地に安全に速く辿り着きたいものです。視覚障害者とて同じこと。
実際、教育や雇用、地域社会への参加を考えると、経済的に負担できる範囲で、アクセシブルな交通手段が利用できるか否かが、視覚障害者にとっての大きな障壁となります。

WBUは交通アクセスやデザインの動きに注目しています。
最近も国際交通フォーラムに代表を派遣し、最近の儀実確信に関する議論を大変興味深く聞きました。
将来、歩行者や自転車や自動車と同じ場所を、視覚障害者が単独で安心して歩行できる社会を目指す時代が来るかも知れません。
運転が要らない自動車や、電子のキューを使って交通信号を作動させる機器の開発に向けての技術革新も進んでいます。
こうした場所での移動をデザインする際、技術の専門家は、視覚によるサインを見ることが出来ない人たちのニーズを考慮してくれるでしょうか?

視覚障害者のニーズが忘れられないよう、WBUも加盟各国も、こうした開発プロセスに関与することが肝要です。
今も、音の無い自動車の問題で政府機関と議論を続けています。
電気自動車や燃料電池の自動車は、信号で止まったり低い速度で走行している間は、音が殆ど出ません。
これは、自動車の音を頼りに道路の横断の可否を決める視覚障害者にとっては、深刻な安全問題となります。
当初から視覚障害者のニーズを考慮した製品開発であれば、既に音の無い自動車が市場に出回り視覚障害者の安全を脅かす今ごろなって、製品デザインの再考を要請する必要など無かったわけです。

スマホ向けアクセシブルなGPSアプリの開発で、視覚障害者の単独歩行に新たな道が開けましたが、どのアプリが信頼できてアクセシブルで購入できる価格帯かという情報が必要です。
アプリが市場に出る前に、視覚障害者が実際に使ってみて、憶測で視覚障害者にとっての使い勝手を判断されないよう、メーカーや開発者にフィードバックする必要があります。

視覚障害者の歩行のシンボルとなっている白杖は、今でも世界中の視覚障害さの歩行で最も利用される支援機器です。
この白杖にも、技術の手が伸び、バイブレーターで障害物からの距離が分かるような仕組みが加えられようとしています。
但し、視覚障害者の9割は途上国に住み、こうした最新技術は高嶺の花ですから、大多数の視覚障害者には非現実的な話です。
途上国の視覚障害者は殆ど、この最も基本的な歩行支援機器である白杖すら手にすることができません。

世界各地で都市化が進み社会のインフラが整備されていく中で、視覚障害者のニーズは、後から訴えるのではなく、計画段階から考慮されなければなりません。

国連障害者の権利条約でも、ユニバーサルデザインの考え方が謳われています。
新しい製品や機能を立案し開発する段階で、ユニバーサルデザインとインクルージョンの原則を反映させなければなりません。

WBUは各国政府・立法府・デザイナー・生産者に対し、ユニバーサルデザインを確実にする基準の導入を要請します。
エンジニアの皆さんは、デザインの変更に就いて議論をし、アクセシビリティに問題がある場合は、大量生産になる前のテスト段階で対応できるよう、WBUや加盟団体と連絡を取ることを要請します。

WBU加盟団体始め、視覚障害関連団体に於いては、各国の交通計画にアクセシビリティの要件が反映されるよう、地元の交通や都市計画に関する会合に積極的に参加することを勧めます。
こうした集まりの日程や詳細など、政府に積極的に問い合わせましょう。

(翻訳:田畑美智子)


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by welblind | 2015-02-02 18:19 | WBU